「何もつけていない下半身を見られることの恥ずかしさから、つい命綱を離してしまい、転落死した女性たちがおり、この火災をきっかけに日本の女性たちはズロースを穿(は)き始めた。」
火災事件とほぼ同等に伝えられてきた、白木屋の下着伝説を短く言えばこうなるが、井上章一氏の著作「パンツが見える。羞恥心(しゅうちしん)の現代史」などを始めとして、この伝説には誇張や拡大解釈がずいぶんと混じっているとの指摘もある。
この火災において死亡した人たちに関しては、それぞれの状況が記録に残っており、死亡した男女の比率は男性が6人(1人焼死・5人転落死)、女性は8人(全員転落死)であった。
死亡した女性8人は、ほとんどが6階か7階にいた人たちであった。
具体的に1人1人の状況を見てみると、8人のうちの2人はロープを使って壁から下に降りている際、煙に巻かれてロープを離してしまい、転落死している。
そして別の1人はロープが焼き切れて転落死、別の1人はロープで降りている最中、建物の一部にひっかかってロープを離してしまい、転落死、そしてもう1人は雨樋(あまどい)をつたって下へ降りていたが、途中で手の力が限界となり、転落死している。
そして自分の意思で7階から飛び降りた女性たちが3人いた。このまま焼かれて苦しみながら死ぬよりも、いっそ飛び降りて死のうという、助かるか助からないかという選択ではなく、死ぬ方法を選択しなければならないという、極限まで追い込まれての飛び降りであった。
そのうちの2人は親友同士で、飛び降りる直前にお互いの名前を叫んで飛び降りたと言われている。
記録に残っている限りでは、女性の恥じらいを直接の原因として、転落して死亡に至った女性はいなかったようである。
前述の山田専務のコメントにも、転落した女性がいたとは掲載されているが転落「死」とは掲載されていない。ただ、2階や3階まで壁づたいに降りて来て、本当に着物の裾(すそ)や股を押えたために落ちてしまった女性が何人もいたのも事実のようであるが、彼女たちは全員、死亡ではなく、負傷で済んだようである。




